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光文社の書籍メディア「本がすき。」で、ブックレビューを書かせていただくことになりました。ヤングアダルト、ジュブナイル系を中心に紹介していけたらと思っています。

"混沌"の時代を戦いぬくために、今こそ読むべき傑作ヤングアダルトーーカーネギー賞受賞『混沌の叫び』三部作 | 本がすき。

『混沌の叫び1 心のナイフ』東京創元社 パトリック・ネス/翻訳 金原瑞人・樋渡正人 シリーズ小説の1巻だけを図書館から借りて帰り、家で読み終えたあと「続きが手元にないっ!」と気づいて絶望することがたまにある。そういうときの苦痛はほとんど拷問。「早く明日になってくれ~!」と頭の中で叫びながら一夜を明かすのであった。 『混沌の叫び』三部作(パトリック・ネス著/東京創元社)は、私にそんな拷問を味あわせた思い出深いシリーズ。イギリス本国ではカーネギー賞をはじめ多数の受賞に輝いたヒット作で、来年には映画も公開となる。ヤングアダルトと呼ばれる若者向け小説だが、もちろん大人が読んでも問題なく面白い。 まず関心を引かざるを得ないのは、なんといってもその風変わりな世界設定だ。この小説の舞台である惑星ニュー・ワールドには、ある奇病が蔓延している。それは、人間の考えが"ノイズ"として、文字と音の両方でその人の身体から垂れ流され続けてしまうというもの。嘘は無意味だし、エグい性的欲望も全部垂れ流し。異様な世界だが、人々はそれに良くも悪くも慣れきってしまい、他人の醜い内面をなんとなく無視しながら、虚ろに日々を過ごしている。 なるほどSNS時代へのアイロニーか、と思いきや、この小説が発表されたのは2008年、世界的に言ってもまだSNS時代黎明期である。ネスの感性の鋭さが感じられる設定だと言えよう。 話を戻すとこの奇病、「女性を殺す」という特性も持っている。故にこの世界の女性は死に絶えており、この先人類が繁栄する見込みはない。 主人公トッドは、そんな不毛の世界における"最年少"の少年である。彼もまた、世界に対して何の希望もなく大人になっていく……はずだったのが、ある日を境に運命が激変。なんと、この世界にいるはずのない「少女」ヴァイオラに出会ってしまったうえ、ひょんなことから町中の大人たちに命を狙われるハメになったのだ。 大人たちはなぜトッドを殺そうとするのか、ヴァイオラがこの星に送り込まれた理由は?

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